
参加団体の近況とコメント
2013年4月から2015年3月までの二年にわたり行われた地域コミュニティの交流支援事業。事業の終了に伴い、各参加団体の代表者の皆さんから近況とコメントをいただきました。今後の震災復興をどのように乗り越えていくか。皆さんの覚悟や復興支援のヒントについてお聴きすることができました。


















大槌中学校 鈴木利典校長(現気仙中学校校長):
大槌中学校はその後も感謝の言葉を伝える「語り部」活動を行っており、北海道から東京、大阪まで公演に赴いている。心のケアに関しては、対個人より対集団のケアが必要と考え、現在赴任している気仙中学校でも、子どもたちが学校に来たくなるような行事の開催を続けている。また、子どもに限らず保護者の心のケアにも気を配りたい。
震災から4年が経ち、被災した子どもたちもどんどん成長しており、子どもたちが震災と向き合うべき時期に来ている。そのために学校ができることを模索している。子どもたちが前に出るチャンスをどんどん応援していきたい。
土淵中学校 内藤義晶先生:
今年度の復興教育学習会では大船渡市の「奇跡の集落吉浜」の吉浜中学校村上校長先生のお話を伺い、昔から伝わる防災の教訓などについて学んだ。またその他では「心の架け橋プロジェクト」により、山田町の中学校と野球やテニスの部活動交流があった。
これからの震災復興については、震災を忘れずに、無理せず長く続けられる活動を考えることが大切だ。教育現場においても、語り継いでいく教育を行っていきたい。
豊間根野球スポーツ少年団コーチ 尾形さん:
震災から4年、これからの復興にどのように取り組めばいいのか、まだ答えは出ない。人口の流出も深刻な問題だ。しかし、子どもたちはすこしずつ元気を取り戻してきたように思う。豊間根、荒川両チームは力を合わせて元気に練習している。交流会は子どもたちの良い思い出になった。悲惨な記憶を完全に消すことはできないが、人との交流によって楽になる部分は必ずあると思うので、今後も他地域との交流は続けていきたい。
桜城野球スポーツ少年団 千葉繁夫監督:
震災後から、用具の寄付や盛岡のグラウンドの貸し出しなどで沿岸のチームを応援してきた。内陸の人間として、相手のことを想い、気持ちを理解しようという態度で支援の形を探していくことが大切だと思う。
交流会では直接現地の様子を見たこと、子どもたちに新しい友達ができたことが嬉しかった。今後も父母の会を中心に、交流を続けていきたい。沿岸では多数のグラウンドが失われ子どもたちの運動の機会が限られているという話を耳にするが、子どもたちの心身の成長が心配だ。子どもたちには、「努力は裏切らない」という言葉を伝えていきたい。
釜石市水泳協会 菊池達男会長:
震災復興イベントで応援してもらえることはとてもありがたいこと。内陸との交流はこれからも継続したい。しかし同時に震災のつらい記憶を早く忘れたいという気持ちがあることも事実。まだまだ自分の生活を立て直すことで精一杯の人が多い。学校のプールや海水浴場の整備も復興の優先順位としては下位にあるため、どのくらいかかるのかが全く見えてこない状況だ。安心して生活できる環境を一日でも早く取り戻したい。
株式会社市力/トップ・スイミングスクール 冨岡正勝さん:
復興の進み具合は全体の半分、遅いかなという印象だが、子どもたちはほとんど震災を忘れることができているように感じる。2年後の国体も視野に入れ、人口減少が著しいこの地域で、スイミングスクールを存続させていく方法を模索していきたい。
盛岡市総合プール 佐藤光義さん:
内陸の自分たちにどんな支援ができるか教えて欲しい。仮設住宅の方々をはじめ皆さんが元の生活に早く戻れるよう、今後の行政の施策に期待したい。
大槌町のペーパークラフト教室 澤口勝美さん:
以前よりも子どもたちにペーパークラフトを教える機会が増えてきている。大槌町に4か所ある、放課後の児童厚生施設が主な出張先だ。震災から4年経つが、抑圧された生活下にある子どもたちの心は荒れていく一方だ。子どもたちの相談を聴く機会も多い。
今後は、「花道プロジェクト」での植樹活動、自分でネイチャースクールを開催するなど、子どもたちをどんどん外に連れ出す活動を通して彼らを見つめていきたい。
特定非営利活動法人ワーカーズコープ 古澤光さん:
高齢化や過疎化など現代日本の抱える課題が震災を機により早く表面化したのが今の沿岸被災地なのではないかと感じる。実際に、住まいの問題が解決されず、まだまだ復興したとは言えない状態が続いている。公園等の遊び場も未整備のままだ。これからの復興で必要になるのは、「まちづくり」の主体となる人材の創出、そのための機会づくりだと考えている。
現在も子どもたちが遊べる機会づくりの活動を続けている。今後は地域のいろいろな大人が関わる機会を増やし、子どもたちもより自覚的に活動できるような取り組みを目指したい。
田野畑村羅賀地区自治会長 畠山拓雄さん:
現在の羅賀地区では、建設中の住宅10件ほどを残し、高台移転の公営住宅への移住が完了、被災した明治・昭和の津波記念碑の復活に加え、新しい津波記念碑の建設にも着手している。今後の課題としては、高台移転によって距離が離れてしまったコミュニティの問題がある。震災後様々な支援をいただいた地域に対して感謝の気持ちを表すとともに、これからの子どもたちのためにも地域間交流を継続し、繋がりを大切にしていきたい。
盛岡市大宮町内会長 宮野勇夫さん:
大宮町内会では来年度に向け、下久根農家組合と合同で羅賀地区との交流会を企画している。その他、最近では防災訓練も行っている。個人的には3年前から行っている保護司会での支援活動や、被災地に足を運び現地の様子を見聞きしてきた。これまで実感したことは、ちょっとしたつながりから見つけられることがたくさんあるということ。企画している来年度の交流では、復興に関する羅賀の皆さんの声に耳を傾け、前回よりも多くの情報を得る機会とし、ひとりひとりの意識を高めていきたい。
田野畑村羅賀地区の大宮神楽 中村房永さん:
交流会の後、神楽を舞う子どもたちも着付けなどサポートを行う大人たちもより一生懸命活動に取り組んでいる。今感じることは、ハード面での復興が完了しつつあるのに対して、移転や移住によって人が離れていくことで地域の力が失われていくという危機感だ。少ない人数でも地域のイベントから活力のあるものにしていきたい。神楽では、前回の交流会のように、他の地域の伝統芸能をはじめ様々なものを見てまわり、刺激や勉強の機会としたい。
盛岡市の大宮神楽保存会 鈴木寛隆さん:
その後近いところでは、和賀線の開通式で演舞を行うなど地域の伝統芸能としての活動を充実させている。これからの復興に関しては、報道の機会もどんどん少なくなっていく中で、震災があったことを忘れることなく、人から人へ、世代から世代へと伝えていくことが大切だと感じている。月命日などの節目の日にはみんなで震災を思い出し、お互いに情報を発信していきたい。交流でお世話になった羅賀の大宮神楽の皆さんとは、またこちらでイベントごとがあるときなどにご招待できればと考えている。
田野畑村羅賀地区の大宮神楽/津波語り部ガイド 下坂弘次さん:
人の心の復旧のため、観光客を通し、他町村、郷土芸能などで交流をして、元気と笑顔をもらいたい。地域に人が増えて、昔のように笑顔が戻ることを願い、そのために少しでも力になれればと思う。今後は後継者の育成をしていきたい。
下久根農家組合長 佐藤安正さん:
盛岡は災害のほとんどない地域だと思っていたが、2013年の玉山地区での台風被害を経験し、自分たちでも防災意識を高める必要があると感じた。羅賀での語り部体験のような、被災者の経験を教訓とし、こちらでも生かす方法を考えるべきだ。
今回は大人だけの交流だったが、今度は下久根の子供会などにも呼びかけ、子どもたちにも震災について学ぶ機会を設けたい。また、下久根には子どもが中心となって行われる「七夕行燈まつり」があるのでそこでの交流なども良いかもしれない。
宮古市山口太鼓の会 佐々木達哉さん:
昨年は国内だけはなく上海等でも公演があり充実した一年だった。現在は来年行う45周年記念公演にむけ準備を進めている。交流会後も、都南太鼓保存会の皆さんとはフェスティバル等でお会いしている。震災復興のこれからの課題として、まだまだ内陸と沿岸の意識の差を感じている。今後も太鼓を通じ沿岸の事を発信していけたらと考えている。
盛岡市都南太鼓保存会 藤沢敏勝副会長:
震災後、個人的には陸前高田市の知り合いに野菜を送ったり、大槌の仮設住宅を訪問したりと活動していた。仮設住宅で感じたのは、住民の人たちの表情が明るかったということ。復興も思ったより良い方向に進んでいるのかもしれない、という印象を受けた。
都南太鼓保存会としては、地域に貢献できる活動を意識して行っていきたい。また、イベントなどに呼ばれる機会があれば積極的に交流を行いたいと考えている。今年に入ってからも国際交流村での太鼓講習会など、活動を広げている。
野田・普代・田野畑 コーラス・ライオット風 金子泰子さん:
普代村は人・物的な被害は少なかったが、近隣の地域の痛手を間近で見ていたため、また違った辛さを感じていた地域だと思う。そんな環境で、物的よりも心的な部分での寄り添いの必要性を感じた。好きでやってきたコーラス活動、音楽という方法で地域の活性化の役に立てることを、やれる範囲でやっていければと考えている。震災がきっかけとなった今回の交流での出会いのように、これからは「災いを転じさせるもの」に目を向けていきたい。そしてその新たな絆を大事にした活動をしていきたい。
MFC(見前小学校ふれあい合唱団) 藤原藤男さん:
交流会のその後も、交流会の時の写真が届いたりこちらから感謝の寄せ書きを送ったりと、ライオット風さんとのやり取りは続いている。これからの復興に関して、土木面の復興は時間がかかるが、震災をきっかけにできた繋がりを切らさず、絶やさず、次に繋いでいきたい。
